2019.03.07
道成寺・・・(旅行)
和歌山県日高郡日高川町にある道成寺を訪れました。天台宗の寺院で能、歌舞伎、人形浄瑠璃の演目で有名となった「安珍・清姫伝説」のお寺である。
大宝元年(701)、文武天皇の勅願により、義淵僧正を開山として紀大臣道成なる者が建立したという。紀州で一番古く本堂など重要文化財の建造物や、国宝、文化財指定の仏像などがある。空海が高野山を開いたのが弘仁7(816)であるので、それより100年以上古い。
駐車場から進むと、石段とその上に仁王門が見えてくる。この石段は、昔から「のぼりやすく、おりやすい」と言われ、旧国鉄の技術者が測量に来たこともあるとのこと。実はこれには秘密があって、左右の土手が平行でなく、逆ハの字に開いているのである。石段自体は平行だが、その左右の斜面が上は広く下がせまく全体として台形の石段になっている。そのために見た目には階段が短く見え、上りやすく感じることを狙ったのである。この石段が台形になっていることは、住職はじめ誰も気づかず、平成15年に石段の前の道がアスファルトから石畳に舗装しなおされた時、工事関係者が気づいたとのこと。たしかに、心なしか楽に上れたように感じた。
階段を上って仁王門をくぐると正面に本堂が見えてきた。仁王門とともに国指定重要文化財の建築物である。
本堂の右手方向には三重の塔がある。台風が度々上陸する土地柄で戦国時代には「塔は無く、礎石ばかりなり」と記されいたというが、江戸期に入って世情も安定し、元禄十三年(1763)に再建されたもので、県指定重要文化財となっている。この塔には特徴があり、一、二階の屋根は平行垂木(へいこうだるき)で、三階は扇垂木(おうぎだるき)で支えられている。
これについて、不思議な民話が残っている。棟梁が二階まで組み上げて、下に降りて休憩していると、一人の巡礼が通りかかり、扇垂木って知ってるか?もっと美しい塔にできる方法があると話しかけた。
棟梁が巡礼の言う通りに三階を扇垂木にしてみると、見映えが一層良くなった。「ああ、一階も二階も扇垂木としておけば良かった。わしも素人に教わるようでは…」と後悔して、完成後に、三階から鋭いノミを口にくわえて飛び降り自殺をしてしまったという。しかし、話としては面白いが、そんな事実はなく。おそらく、晩酌が過ぎて「飲み」で命を落としたののではと思われるとのこと。
本堂の左手方向には「護摩堂」があり、その前方には「入相桜(いりあいざくら)」という桜の植え込みがある。江戸時代には有名な大木で、古今和歌集に能因法師の和歌がある。「山里の 春の夕暮れ 来て見れば 入相の鐘に 花ぞ散りける」
入相桜は和歌山県の天然記念物に指定されていたが、大正年間に台風で幹が折れ、指定は解除された。幹は折れたものの、根本から別の芽が出て、今では再び大木の桜となって枝を広げている。
道成寺では、昭和50年代に境内の発掘調査が行われ、法隆寺を左右逆にした伽藍配置であったことがわかり、法隆寺に今も残る鐘楼の位置を、左右逆にして道成寺にあてはめると、道成寺の初代鐘楼の場所には入相桜の植え込みがある場所と判明した。最近の発掘調査で正に鐘楼のあった場所と特定され、周りから焼けた土も見出された。
安珍・清姫の伝説は、鐘楼が何らかの原因で焼けたことと関連があるのではないだろうか。
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